飲酒の機会やが増えたり、気温が高くなると徐々に増え始める痛風。突然、足や指の関節が赤く腫れ、熱をもって痛み出す…「風が当たっただけでも飛び上がるほど痛い」ということからこの名が付きました。酒や肉が原因となることが多いため、かつては「ぜいたく病」ともいわれていました。痛風が起こる原因「痛風がなぜおこるか?」ということを、絵を見ながら説明してみたいと思います。痛風のきっかけは、血液中に溶けきれなくなった尿酸が結晶化することです。この尿酸結晶は体にとっては異物なので、白血球が「敵だ!」と勘違いして排除しようとし、結果、強力な炎症が起きてしまうのです。さて、小学生の頃、「食塩を水に溶かす実験」をした記憶はありませんか?食塩を水に溶かしていくと…最終的に溶けきれなくなった食塩は結晶として出てきた、というものです。機序はそれと同じです。食塩が溶けきれなくなる要因はこの3つでした。これは尿酸も同じです。① 溶質(溶けている物質)が過剰② 溶媒(溶かしている液体)の不足③ 温度の低下①溶質が過剰 : プリン体の多い食品、アルコールなどが原因血液中の尿酸値が高くなると(高尿酸血症)、溶けきれなくなった尿酸が結晶化します。尿酸値上昇の原因としては、尿酸の原料となるプリン体の摂取過剰や、アルコール摂取などがあげられます。実はアルコール自体が分解されるときに尿酸できるため、プリン体オフのアルコールでも大丈夫とは言えないのです。上手にプリン体を抑えた食事を心がけましょう。プリン体が多い食品 : 肉類、魚介類、内臓類 (レバーなど)一般的に安全といわれる飲酒量 : アルコール1日20グラムまで。週2日は休肝日を。=ビール500ml、日本酒180ml、焼酎110ml、ワイン150ml、ウィスキー60ml程度まで【参考記事】 自分の飲酒習慣は大丈夫?上手にアルコールと付き合おう! | みんなの健康ノート②溶媒(溶かしている液体)の不足 : 脱水、アルコール摂取などが原因尿酸が溶けているのは血液ですが、液体なので基本は水です。つまり、水分が減る「脱水」は尿酸が結晶化するきっかけになるのです。また、アルコールには利尿作用があるため「脱水」状態になっていきます。水分はしっかりと取りましょうね。【お祭りにシーズンは要注意!?】お祭りのシーズンがやってくると、外来に痛風の患者さんが増えます。理由は簡単。①②の通り、「暑い中いっぱい汗をかきながら、お酒をたくさん飲んでいる」ということですね。お酒はほどほどに控えて、水分をしっかりとって痛風発作を予防しましょう!③温度の低下温度が下がると尿酸は溶けられなくなり結晶化します。痛風が関節に起こりやすい理由は、関節内には血管がないので体温よりも低くなっているからなのです。体温の調節は自力ではどうにもならないので、この点は予防のしようがありません。ただ、注意点として、発作が起きているときはしっかりと冷やすことが大切です。発作が起きているときは、炎症の影響で血流が増え、腫れあがります。冷やすことで余分な血流を減らし、痛みを軽減することができます。また、休む時は足を高くすると、むくみづらくなるので症状が緩和します。【湿布で冷やしてもいいですか?】よくある間違いとして湿布には冷やす効果はないということを知っておくといいでしょう。湿布はひんやりとはしますが、表面が冷えているだけなので冷やす効果はありません。氷嚢や保冷材のように「冷たいもの」を使用して、冷やすようにしてくださいね。以上が痛風発作の機序になります。さて、痛風の原因となる、「尿酸の過剰状態」を高尿酸血症と呼びます。原因はさまざまで生活習慣だけが原因とも限りません。高尿酸血症の治療方針についても国や状況によって様々。尿酸値が基準値を超えたら治療を始めるという国もあるし、一方で高尿酸血症による直接的な問題(痛風発作や尿管結石など)が出現するまでは特に投薬はしない、という考え方もあります。治療方針は、主治医と相談して決めていきましょう。