アトピーってなんだ?アトピーってなんでしょう。聞いたことはあるけど良くわからない、という方も多いのではないでしょうか。正式には「アトピー性皮膚炎」といい、皮膚の乾燥・かゆみ・湿疹が、良くなったり悪くなったりを繰り返す、長く付き合っていく必要のあるアレルギーの病気です。アトピー性皮膚炎は30代までの約10人に1人が持っていると言われており、患者さんの多くはアトピー素因※というアレルギー体質を持っています。※アトピー素因:気管支喘息・アレルギー性鼻炎・結膜炎・アトピー性皮膚炎などの家族歴などさて、今回はアトピー性皮膚炎の治療を通じて、スキンケアの基本とコツについて説明したいと思います。アトピーや乾燥肌の人の肌で起きていることまず、健康な状態の皮膚の状況を見ていきましょう。健康な状態の皮膚では、皮脂を分泌して、乾燥から皮膚の細胞を守ります(1つ目のバリア)。皮膚の細胞がうるおい、きれいに隙間なく並ぶことで外の刺激から体の中を守っています(2つ目のバリア)。このように健康な状態の皮膚では「2つのバリア」が機能しています。しかし、アトピーや乾燥肌の人は、皮脂の分泌が少ないため、皮膚の細胞を乾燥から守れません。皮膚の細胞が乾燥すると、隙間が生じ、外の刺激が体の中まで届いてしまいます。また、隙間が出来ることにより乾燥がさらに進みます。かゆくて皮膚をかいてしまうと、さらにバリアが壊れます。こうして悪循環に陥ってしまうのです。スキンケアの目標は、この悪循環を断ち切り、健康な状態の皮膚に整えることにあります。スキンケアの大原則:洗いすぎない・保湿をするさて、ここでおかしなことに気が付きませんか。普段私たちが入浴の時に、ボディソープや石けん、ボディタオルやあかすりを使って、せっせと体を洗っているわけですが、、、これは果たして肌に良いのでしょうか…?実はこれらは、肌にとってダメージになってしまっています。私たちの体が、私たち自身を守るために一生懸命進化させてきた「2つのバリア」。まずは皮脂を過剰に落とさない、「2つのバリア」を壊さないことの重要性を理解しましょう。必要以上に皮脂を落とさない!洗いすぎない!石けんやボディソープは必要最小限に!では、石けんやボディソープなどは使用しなくていいのでしょうか。答えは、基本的には「はい」です。ほとんど使用しなくて構いません。石けんやボディソープは界面活性剤で皮脂を落としますが、皮脂はそもそも「自分の体が作った大切なオーダーメイドの保湿剤」。これを落とすのはもったいないわけです。また、私たちの体は普通に生活しているくらいではそんなに汚れません。服を脱いで、「うわ!あぶらでドロドロ!」ってことはまずないので、躍起になって洗う必要はないです。実際、脂は温めると溶けるので、お湯で流すだけで、程よく皮脂は落ちてくれます。「お湯で顔や手を洗うと突っ張る・乾燥する・荒れる」という経験がある方も多いと思います。ただ、石けんやボディソープを使ってはいけないわけではないし、個人差はありますが、基本的には気になった時に気になったところにだけ、必要最小限で使用することをお勧めします(週1回とか)。洗った後は失った分の保湿も忘れずに。ボディタオルや垢すりは基本的には使用しない。ボディタオルや垢すりは、皮膚を傷めるだけでなく、皮脂も根こそぎとってしまうので使用しないことを推奨します。体を洗う時は「石けんやボディソープを泡立てて手で優しく洗う」ことを意識してください。首から下、特に下半身は乾燥しやすいので洗いすぎに注意!首から上は割と皮脂が多いので、シャンプーや洗顔は基本的には毎日した方がいいと思います。洗いすぎに注意すべきなのは、首から下、特に下半身です。皮脂の分泌が少なく、ほとんどの人は足から乾燥や湿疹の症状が出てきます。それでも乾燥するなら保湿をする!洗いすぎをやめるだけで、乾燥はかなり改善することが多いです。しかし、加齢や体質などの関係でどうしても乾燥してしまう人もいます。その場合は、保湿剤などを使用してこまめに保湿をしましょう。いくら洗っても乾燥もしないし、かゆみもない、という人はそのままでいいかもしれませんが、乾燥やかゆみに困っている人は、まずは「洗いすぎを止める」「保湿をしっかりとする」ことから始めてみましょう。「清潔」と「健康」の落としどころを見つける:自分も周囲も快適に「でも、洗わないと不潔なんじゃないの?」と思われる方もいるかもしれません。そもそも清潔・不潔って?また、健康との関連はどうなっているのでしょうか?少し考え方を整理してみしょう。まず「清潔」と「健康」を区別し、清潔度は「社会生活上のリスク」、健康度は「健康・病気のリスク」と考えてください。清潔は「周囲を不快にさせない状態」、健康は「元気な状態」といったイメージです。そうすると、衛生状態として「不潔かつ不健康」「不潔だが健康」「清潔かつ健康」「清潔だが不健康」の4つの状態が見えてきます。状態例①不潔/不健康しばらく風呂に入っておらず、臭いが強く、周囲に不快感を与える。しかも、本人にも痒みや湿疹などの皮膚トラブルが起きている。②不潔/健康しばらく風呂に入っておらず、臭いが強く、周囲に不快感を与える。しかし、本人はとても元気である。③清潔/健康定期的に風呂に入っており、周囲に不快感を与えない。本人もとても元気である。④清潔/不健康定期的に風呂に入っており、周囲に不快感を与えない。しかし、過剰な手洗いや入浴で、皮膚乾燥や手荒れ・湿疹などの皮膚トラブルが起きている。おそらく、みなさんの考える「不潔でない状態」は「③清潔/健康」で、「本人は健康かつ、周囲を不快にさせない清潔状態」をさしていることが多いと思います。ただ、注意すべきは、清潔の中にも不健康な状態「④清潔/不健康」が存在する、つまり「清潔にしすぎた結果、不健康になっている状態」があるということです。実際外来診療をしていて感じるのは、皮膚トラブルの方の多くは「④清潔/不健康」状態になっているということです。人間は集団生活を営んでいるので、「社会的な清潔状態」についても無視はできませんが、個人の健康を害しては元も子もありません。「健康的・社会的な清潔状態(③清潔/健康)」を保ちつつ、「不健康な清潔状態(④清潔/不健康)」までは行ってしまわないよう、落としどころを見つけていく必要があるのです。今回は、基本編でした。私たち人間は、どこまで行っても動物で、「自然のもの」です。他の動物で、石けんで毎日体を洗う動物は。。。いませんよね。スキンケアのために何かをする事も大切ですが、理解したうえで「余計なことはしない」ということも大切です。次回は、治療編です。【治療編】アトピーから学ぶ、スキンケアの基本とコツ