当院の6〜7カ月・9〜10カ月乳児健診の際にお渡ししている資料「赤ちゃんがいるご家庭に」のWeb版です。当院の健診を受けられたご家庭だけでなく、少しでも多くの赤ちゃんのいるご家庭にご覧いただきたい内容です。少しボリュームは多いですが、ぜひ一度ご一読ください。事故を防ごう編チャイルドシートは正しく使えていますか?(1)車の場合2019年度の警察庁/JAFの合同調査で衝撃の事実が判明しました。道路交通法で6歳未満のチャイルドシート使用が義務化されていますが、「3人に1人がチャイルドシートを使用していない」「使用している人も、3人に2人が正しく使用できていない」という結果に。。。チャイルドシートを着用せずに車の事故にあうと、死亡する危険は4倍に!説明書などを読み、正しく装着しましょう。目安ですが、1歳・10kgまでは、後ろ向きに取り付けましょう。取り付け位置は後部座席(可能なら歩道側)に取り付けましょう。【参考ページ】はじめてのチャイルドシート クイックガイド | JAF(日本自動車連盟)(2)自転車の場合市街地では、自転車で移動される方も多いので自転車の注意点も見ていきましょう。一般的には前乗せは1歳以上、後ろ乗せは2歳以上が推奨されています。簡単に比較表を載せてみるので、参考にしてみてください。また、自転車のチャイルドシートの使用の詳細は各製品説明書を見てくださいね。異物誤飲や窒息を防ぐために動けるようになった赤ちゃんは興味のかたまり。薬、化粧品…なんでも口に入れてしまいます。1m以下の高さには、赤ちゃんの口に入る大きさのもの(4cm未満)は置かないようにしましょう。ピーナッツ、ポップコーン、アメなど小さな食品は、4歳以降にしましょう。誤飲で多いものは、「1位・たばこ」「2位・医薬品」「3位・プラスチック製品やおもちゃ」。5〜6か月ごろから見られ、8か月ごろが最も多いので、乳児期後半は特に注意を!基本的に「吐かせない」で「同じものがあればそれを持って」受診するようにしてください。「いつ」「何を」「どのくらい」飲んだかが重要です。※窒息で苦しがっている場合(気道異物)は吐かせてください。【参考ページ】教えて!ドクター配布フライヤー・冊子PDF「誤飲」転落事故に要注意!自分で動けるようになった赤ちゃんは、外の世界に興味津々。自分の体を動かすことも、何かを動かすことも、周りの反応も、楽しくて仕方がありません。赤ちゃんにとって必要な経験ですが、事故は避けたいもの。安全な環境を整えるように意識しましょう!(1)赤ちゃんが転落しないようにしよう柵を挙げていないベッド・テーブルなどの高い所に、赤ちゃんを置いたままにして離れないようにしましょう。寝返りが出来ずとも、ずり動いて転落することもあります。(2)赤ちゃんに物が落ちてこないようにしよう手に届くものは何でも引っ張っておもちゃにしてしまいます。テーブルクロス、コード類などには注意。電気ケトルやヘアアイロンなどの落下によるやけどでの受診が多いです。柔らかいマットの上には寝かせないようにしましょう上手く力が入らず、寝返りが打てないことがあります。乳幼児突然死症候群や窒息の原因となることがあるので、十分に注意しましょう。心がまえ編子育ての方法に正解はありません。しかし、ゴールはいつの時代もかわりません。子どもにとって幸せな人生であること、その結果として、周囲の人も幸せを感じられることです。医学、発達心理学、教育学の視点から、わずかばかりですが、力になれればと思います。生きる力をつけるために発達課題を達成する人には、成長する過程でこなさなければならない人生の課題「発達課題」というものがあります。乳児期には「基本的信頼感の獲得」という課題をクリアする必要があります。基本的信頼感とは「根拠のなく信じる力」で「希望」とも言われます。「何もできない弱い自分」が、それでも受けいれてもらえる場所があると感じることで、生きる上で不可欠な、自己、そして他者を信じる力を手にするのです。大人は、子どもがそう感じれるような居場所であり続けること。それが大切なのです。「育てる」から「育つ援助をする」へ子どもは、教えたわけでもないのに、いつの間にか、色々なことが出来るようになっていきます。子どもは勝手に育つのです。自分自身を育てる力が備わっているのです。大人に出来ることは、子どもたちが自ら「育つ」ことのできる環境を整えてあげること。忘れてはならないのが、私たち大人も、この環境に含まれるということです。子どもは、見たように、聞いたように、感じたように育ちます。言葉づかい、人との接し方、夫婦仲など、丁寧な人間関係を心がけましょう。私たち大人が、子どもにとってのお手本となるような、良い環境になれるといいですね。最後に。あなたが子どものために、今悩んでいるということが、何よりも素晴らしいことです。目をそらさずに向き合っている証拠なのですから。きっと大丈夫です。これからも、子どもに愛情と敬意と信頼を持って、関わり続けてください。生活での疑問編子どものために、家族のために、自分のためにもたばこをやめましょう喫煙は、子どもの肺炎・中耳炎・喘息・突然死の危険性を高めます。屋外や換気扇の近くで吸っても、呼気内や服に残るため、リスクはほとんど減らせません。家族のためにも、自分もためにも、是非禁煙しましょう!虫歯予防寝かしつけ授乳や哺乳瓶をくわえたまま寝ると虫歯ができやすくなります。また、虫歯菌は感染します。乳歯が生えた後は、口移しは避けるようにしましょう。歯が生えてきたら虫歯予防のためにフッ素塗布が有効です。歯科を受診しましょう。歯みがきも少しずつ始めましょう。習慣づけのために、親が一緒に歯磨きをするといいですね。1歳半頃までは、磨くことよりも、口をあけたり歯ブラシの感触になれることを意識しましょう。おしゃぶりは使っていいの?使っていいのは、母乳栄養がしっかりできるようになってからで、6カ月過ぎくらいまでです。メディアとは上手に付き合いましょう!子どもをメディアに取られないために…テレビにネット、SNSに動画サイト…もはや、私たちの生活から切っても切れないものです。ただし、注意が必要です。メディアに利用されるのではなく、うまく利用しましょう!(1)メディアのデメリットメディアからの刺激は、一方通行です。子どもがどんなに喜んでも、反応してくれません。その結果、言葉を中心とした発達の遅れや注意障害が引き起こされることがわかっています。その他、様々な家族の機能障害につながることが研究で報告されています。(2)付き合い方日本小児科医会・米国小児科学会は、2歳以下でのデジタルメディアの利用は推奨していません。メディアに触れるとしても、親とのかかわり合いの有無が重要です。基本一人で見せないようにしましょう。親とのコミュニケーションツールとして使ってください。ゲームは自制心が付いてからの利用にしましょう。また「駄々をこねるから与える」では、子どもは「駄々をこねれば与えてもらえる」と解釈します。ルールを決め、ダメなものはダメという態度をきちんととりましょう。大人には大人のルールを定め、それを守るという姿勢を見せることも大切です。【子どもとメディアの問題に対する提言 : 日本小児科医会】1. 2歳までのテレビ・ビデオ視聴は控えましょう。2. 授乳中、食事中のテレビ・ビデオの視聴は止めましょう。3. すべてのメディアへ接触する総時間を制限することが重要です。1日2時間までを目安と考えます。テレビゲームは1日30分までを目安と考えます。※補足:米国は3歳以上でも1日最大1時間への限定を推奨している。4. 子ども部屋にはテレビ、ビデオ、パーソナルコンピューターを置かないようにしましょう。5. 保護者と子どもでメディアを上手に利用するルールをつくりましょう。 参考 : 日本小児科医会「子どもとメディア委員会」予防接種をうけましょう予防接種には2つの大切な目的があります。「(1)個人を守ること」と「(2)社会を守ること」です。(1)個人防衛感染リスク、発症リスクを減らす。また、重症化予防も目的。(2)集団免疫免疫力を持った人が多くいることで、社会での感染症の拡大を防ぎます。病気や重度のアレルギーで打てない人たちを守る、防波堤の役割も果たします。(1)はもちろんですが、特に(2)が重要です。「インフルエンザになったことないから打たない」という人もいるかもしれません。しかし、新型コロナでもわかるように、無症状でも感染していることもあるし、むしろ無自覚のまま人にうつして回る「運び屋」になってしまうリスクもあるのです。子どもだけでなく、周囲の大人も予防接種はしっかりと受けていきましょう。【参考ページ】「こどもとおとなのワクチンサイト」e | 日本プライマリ・ケア連合学会日本小児科学会の「知っておきたいわくちん情報」 | 日本小児科学会補完食(離乳食)で大切なこと編補完食の栄養面での目的は「必要な栄養素を補う」こと「離乳食」の字面だけみると、「乳離れのための食事」という印象を持ってしまいませんか?そこで、WHOは「離乳食」に変わる言葉として「補完食」と呼ぶことを提案しています。この生後5〜6カ月頃に始める食事の目的は、母乳だけだと不足する栄養素を「補う」ことなのです。つまり「乳離れ」が目的ではないんですね。母乳やミルクは減らす必要はありません。食事では、鉄、亜鉛、ビタミンD、ビタミンA、ビタミンC、カルシウム等を補っていきます。特に母乳には鉄分が少ないため、鉄分が多いものを意識して摂取することが大切ですね。あくまでも、母乳で不足する栄養を「補完する」ための食事なので、気負わず行きましょう。※補完食を始める目安:支えられれば安定して座れる、固形物を反射的に舌で押し出さなくなる、大人が食べる様子に興味を示す【参考ページ】教えて!ドクター 配布フライヤー・冊子PDF「補完食」補完食の最大の目的は「食事を楽しめるようになる」こと補完食にはもう一つの、そして最大の目的があります。栄養面だけでいうと、あくまでも不足する栄養素を補うという立ち位置。それよりも、「食べることに慣れる」「食事を楽しめるようになる」ことが大切です。そのためのポイントをいくつかお伝えします。(1)無理しない補完食の目的は食事に慣れること。頑張り過ぎないのも大事。ベビーフードも積極的に活用しましょう。(2)あせらない進み方には個人差があります。ちゃんとその子なりに成長していれば大丈夫。あわてず、その子の食べやすい方法や環境を探してみましょう(道具や姿勢など)。食事しない人はいませんから、いつか自分から食べるようになります。(3)環境を作る子どもが食事に興味を持てるような環境を作りましょう。子どもは、親の姿を見て学びます。みなさんが楽しく食事をする姿を見せましょう。また、食事に集中できる環境も大切。テレビやスマホは、食事中は止めましょう。赤ちゃん、家族にとって、「食事の場が楽しいものであること」を大切にしましょう!おわりに盛りだくさんですね。やること、注意すること、いっぱいです。でも大丈夫です。みなさんを、みなさんの家族を支えてくれる人はたくさんいます。1人で抱えず、悩まず、いつでも相談してくださいね。私たちも力になります。お子さんにとっても、ご家族にとっても、すてきな人生のスタートになることを願っています。